素晴らしい景色や、山頂到達時の達成感、豊富な植生に、大自然の中でしか出会えない動物たちなど、様々な魅力を楽しめる登山やハイキング。
そんな素晴らしい体験を得られる反面、急な天候の悪化や道迷い、体力不足による行動不能など、自然の中では多くのリスクも付き纏います。
今回はマウンテントレーナーが学ぶリスク管理の項目の中から、登山者が鑑みるべきポイントをご紹介していきます。
ステップアップ指針と2020年に考えたいポイント
常時から様々なリスクを鑑みるべき登山ですが、2020年は特に気を付ける必要があります。「新しい登山様式」を合言葉に、各山岳団体が様々な指針を示しています。
殆どの指針の中には「難易度を落とした登山を」と記されています。これはコロナウイルスの蔓延時に、遭難者を救助した救助隊がウイルスに感染した事例があるためです。
当然、この時勢の中では「自己責任」は勿論のこと、「他人に迷惑をかける」のは言語道断ですね。では、具体的に「難易度」とは何なのか?どの程度の体力レベルや準備で私たちは目標とする山に向かって良いのでしょうか。
山頂の標高による影響
まず、向かう山を決める要素のひとつに山頂標高があげられます。標高が1,000m上がるごとに気温は6℃低くなるため、3,000m以上の高山では夏でも一桁台の気温を記録します。
気温以外にも天候の急変や強い風、酸素の薄さなど低山とは異なる環境面をよく鑑みないと、思わぬ苦難に出会う可能性があるため注意が必要です。逆に低山では夏場は熱中症のリスクが高まります。
一番大きなポイントとなるコースタイム
各社が提供する登山地図には一般登山道を歩く際に目安となる「コースタイム」の記載があります。長時間の登山では一日に10時間以上歩くことも珍しくありません。
ステップアップを考えるときには総コースタイムはとても重要になります。2時間の登山、4時間の登山、6時間の登山のように、徐々にステップアップしていくことを忘れてはならないでしょう。
例えば「4時間の登山」で疲労困憊なのに、トレーニングをせずに「6時間の登山」に挑戦するのはリスクが高いですね。コースタイムの中で既に鑑みられている要素ですが、登山口から山頂までの「標高差」も距離と同様に重要です。
コース上にある難所
夏も積雪が残る谷間を表す「雪渓」や急な「岩場」、コース上に設置された鎖を姿勢確保の補助にする「鎖場」などが、予定しているルート上に存在しているかどうかも考えたいポイント。
難所の通過に慣れないうちは、コースタイムよりも大幅に時間がかかり、日暮れの危険が迫るなんてことも。あらゆる可能性を想像しておいたほうが良いでしょう。
慣れない難所の通過がある場合には、十分な装備を準備することや経験者の帯同を考え、リスクを軽減したいものです。難所は天候(雨天時など)で更に難易度が上昇することも忘れずに!
見落としがちなコースの環境やアクセス
間接的に影響してくるのは「コースの環境」です。
- 次の山小屋やトイレまでの所要時間は?
- 急な体調不良等の際にエスケープできるルートはあるのか?
- 携帯の電波は繋がる?
など、事前の想像から抜け落ちやすい事項も。インターネットの発達した現代では、事前のリサーチを怠らなければ、だいたいの情報は手に入りますが、それが「最新」情報なのかは別の話しです。「細心」の注意を払って、リアルタイムの情報収集を行うようにしましょう。
また、そもそも登山口へのアクセスが良いのか否かも重要なポイントです。早立ち早帰りが基本の登山では、スタート時間の遅延が大きなリスクになります。
余裕のある登山計画で素晴らしい時間を
しかし、各団体は少しずつ「山に行く」ことを前提に指針を発表しています。決して挑戦をしてはいけない、ということではないので安心してください。
キーワードは「人へ迷惑をかけない」や「十分な準備」などです。(山域によっては2020年度中の登山道閉鎖や山小屋休業などを発表しているところも多いため、各自治体の発表する内容に従うよう計画を進めてください。)
外出自粛で溜まった鬱憤も一気に開放することなく、蔓延状況などを鑑みながら徐々に発散していきたいですね!
日本アウトドアトレーニング協会が主催する「アウトドア・マウンテン・トレーナー」の資格講習会では、今回ご紹介した要素を総合的に鑑み、より定量的にステップアップの指針を示すことのできるシステムの活用を学びます(現在システムの開発中です。本件に関する詳しいお問合せは こちら)。登山やハイキングでリーダーシップを発揮し、安全確保に努めていきたい方は、是非お問い合わせくだいませ。